2021年8月の講座

「ツタンカーメン王墓とその副葬品に関する最新研究」

日 時

 2021年8月21日(土) 13:30~15:00 

講 師

 河合 望(金沢大学教授)

テーマ

「ツタンカーメン王墓とその副葬品に関する最新研究」

場 所

 Zoom オンライン形式 ※レコーディング(録音)・引用等は不可

【要旨】

 三千年に及ぶ古代エジプト文明の中で、本講義のテーマはファラオ(王)ツタンカーメンです。彼は異端とされた宗教改革の関係者のため歴史から抹消された王でしたが、1922年の考古学者ハワード・カーターと後援者カーナヴォン卿による王墓発見で有名になります。彼らは王家の谷で見落とされてきた場所を発掘し、副葬品に満ちた王墓を発見しました。埋葬直後に盗掘されましたが、その後は無傷の王墓は唯一と言えます。しかし墓の規模、構造等から貴族の墓を(王の急死で)転用したと考えられています。

 

 副葬品は五千点に及びますが、日用品と葬送儀礼のための遺物に大別されます。現在建設中(日本も協力)の大エジプト博物館に移送する際に遺物を最新技術で保存・修復・調査しているのですが、その中で6台ある二輪馬車の中の「第二の国王の戦車」に、今までは全く関係ない遺物とされてきた天蓋が装着されていたことが新たに証明されました。戦車のボディの表面に37㎝幅で何かを装着していた痕跡が発見され、天蓋のポールの幅と一致したのです。大エジプト博物館では装着された復元映像がCGなどで展示の予定です。その他豪華な副葬品には彼の先代の女王用の品が再利用された痕が見られました。黄金のマスク、装身具、短剣(一本は最近隕鉄製と判明)も重要です。ミイラの分析から死亡年齢は17~19歳とわかりました。近年の鑑定で病気の痕跡も見つかりましたが死因は現在も不明です。

(まとめ:滝沢 玲)