2019年7月の講座

「フロンティアと周縁:ペルー最北部の形成期」

日 時

 2019年7月20日(土) 14:00~17:00 ★終了しました

講 師

 山本 睦(山形大学)

テーマ

「フロンティアと周縁:ペルー最北部の形成期」

場 所

 東京外国語大学本郷サテライト 5階 【アクセス】

【要旨】

 今回は「形成期中・後期に神殿を中心にどのような社会変化が生じたのか」をテーマに、インタラクション(相互作用)をキーワードとして、物資だけではなく情報やアイデアなどの交流を含めてペルー北部における形成期の社会展開を考察します。この時代の社会変化については、日本のアンデス調査団によって、クントゥル・ワシやパコパンパといったペルー北部山地の大神殿が、それぞれ独自の社会展開をみせたことが明らかにされています。その一方で、形成期中期から後期にかけて、汎アンデス的規模におよぶ交流が成立し、地域間交流が大きく変化したことが研究者の間で認識されています。その中で注目されているのが交流の中心となる各地の神殿間の関係性です。具体的には、形成期において中央アンデスの北端とされるペルー最北部のインガタンボ遺跡の調査により、当時のインタラクションと社会変化について考察します。

 

 調査の結果、インガタンボは大きく3時期に分類されることがわかりました。最古のワンカバンバ期には土器の利用がなく、ペルー北部の周辺地域とは異なる独自の状況が存在したと考えられます。次のポマワカ期には基壇が巨大化し、最終的にはパコパンパとの類似性を示すようになります。また、土器には極北部海岸や北部熱帯低地、あるいは北部山地と類似するものがみられます。最後のインガタンボ期には神殿がさらに大規模化し、以前よりも北部山地や北部海岸との共通性が認められるようになります。このようにインガタンボでは、時期やモノによって共通性を示す地域が異なることがわかりました。エリートによって、戦略的な取捨選択が行われていた可能性があるといえます。各神殿にはそれぞれの戦略があり、多様で複層的なインタラクションがなされていたと考えています。

(まとめ:滝沢 玲