2019年6月の講座

「人と動物の関係から古代アンデス社会を考える」

日 時

 2019年6月15日(土) 14:00~17:00 ★終了しました

講 師

 鵜澤 和弘(東亜大学人間科学部副学長)

テーマ

「人と動物の関係から古代アンデス社会を考える」

場 所

 東京外国語大学本郷サテライト 5階 【アクセス】

【要旨】

 古代アンデスの人達は、動物達に自分達の思い・考えを投影していました。「人と動物の関係」は「利用する・利用される」という枠に収まらない経済合理性を無視した処にありました。さらに、人間社会も人と動物の関係を反映しました。古代アンデスでは様々な動物に固有の意味が与えられていましたがそれを紐解き、人々が何を考えて生きていたか、どういう社会であったか、どういう動物と付き合っていたかを遺跡から出土する動物の骨などから解明するのが私の使命です。

 

 動物考古学の研究は、出土した骨から各種情報を読み取る事から始まります。種、年齢、栄養状態などの属性に加え部位の偏り、解体の痕跡、埋葬の痕跡など人間による動物利用の側面にも注目します。17年間の調査・研究を経ても、アンデス動物考古学は難しい。それは出土した骨は非日常的な神殿からが多かった事実、これをどう説明するかが課題です。

 

 動物界に見られるジャガーを頂点とする食物連鎖、家畜を飼育・管理する経験から人間社会にも階層性が芽生えて来ました。儀礼・祭祀の場である神殿で権力者が演出したのが「饗宴」でした。神殿の内外から集められた動物たちの肉が饗宴主催者の権威を示すべく人々に振舞われました。動物に交じって人も食材に供されていたのは権力者が動物界・人間社会双方の頂点に立ったことを物語っています。

(まとめ:浮田靖彦)