2021年11月の講座

「アンデス文明ー環境・文化・社会のダイナミズム」

日 時

 2021年11月20日(土) 13:30~15:00 

講 師

 大貫良夫(東京大学名誉教授)

テーマ

「アンデス文明ー環境・文化・社会のダイナミズム」

場 所

 Zoom オンライン形式 ※レコーディング(録音)・引用等は不可

【要旨】

 文明が持つ力(ダイナミズム)とは何でしょう。それは結局、その文明を成り立たせている社会と文化の全体でしょう。アンデス文明に置き換えると、その誕生から崩壊までの全過程とも言えるが、ここでは形成期(前3000~前1世紀)それもその時代におけるいくつかの「事件」に焦点を絞って見ていきます。農業活動により生活が安定した形成期の早期から人々は神殿を建設し始めます。早期の神殿には「神殿更新」という興味深い特徴があります。それは、定期的に神殿を覆うように拡大造り替えることです。これは、早期に広まった宗教的な世界観の影響と考えられます。また、これら公共工事により文明の発展と指導者の出現を促進することになったと推察できます。中期になるとペルー北海岸から中央海岸の地域に新しい文化が広がりました。これらの文化は、早期・前期の伝統を継承しつつ、装飾その他の洗練を特徴としています。これらの装飾には神話の一部のワシや蛇、ジャガーを題材とすることが多いです。中には、ワニと解釈できる表現も見られるためワニが神話で重要な位置を占めていたと考えられるが、断定はできません。前800年、それまで繁栄を謳歌していた海岸社会が一斉に放棄されました。原因は不明です。その後500年に渡る空白時期を迎えたが、文化は高地地域に継承され、独自に洗練されていきました。そして、これらの文化がその後のアンデス文明を形成していくことになります。形成期は、アンデス文明において基礎固めの中心を担っていました。しかし、形成期は発展の頂点に達して崩壊するプロセスを繰り返していたように見えます。「盛者必衰の理」この平家物語の一文のようなプロセスが文明において起こる理由についても研究すべきだと考えます。

(まとめ・飯谷奎介)