2020年1月の講座

●1月「世界平和のために造られたメキシコのピラミッド~でも、それだけでは安寧は訪れない~」

日 時

 2020年1月18日(土) 14:00~17:00 ★終了しました

講 師

 嘉幡 茂(ラス・アメリカス・プエブラ大学准教授)

テーマ

「世界平和のために造られたメキシコのピラミッド

 ~でも、それだけでは安寧は訪れない~」

場 所

 東京外国語大学本郷サテライト 5階 【アクセス】

【要旨】

 メソアメリカには数多くのピラミッドが遺されていますが、神殿の内部から王の墓が発見されたことなどもあって、一般にはピラミッドは、王様の墓であると考えられてきました。先生は、ピラミッドは単なる墓ではなく、古代人が自分達の世界観を具象化し、神々に少しでも近づき、世界平和を守るために建てられたのだと説明されます。

 

 古代メソアメリカ人の世界観では、この世は天上界、地上界、地下界の三層からなっており、彼等の先祖や神々は、地下界にも住んでいると信じられてきました。テオティワカン遺跡の太陽のピラミッドや羽毛の蛇神殿の地下には人工の地下洞窟が存在し、地中探査によれば、月のピラミッドの下にも空洞があると推測されています。このようにピラミッドは洞窟と垂直に配列することにより、三層を連結する世界観を具象しているのです。従ってピラミッドは、地下洞窟と一対になってこそ、「聖なる山(神々と交信できる装置)」になり、人民に社会秩序の安定(世界平和)を約束する舞台になります。さらに、為政者は、「聖なる山」の建造のみならず、都市設計にも周辺の山や天体の運行が考慮され、建築方位軸が決定されていると指摘します。つまり、都市は単なる物質空間ではなく、彼等の世界観を表している象徴空間なのです。テオティワカンが一大国家になったのは、この都市には、どのように世界が成り立っているのか、その世界観が十分反映されているため、住民は安心して営為を行えたからだと言えます。

(まとめ:田代茂行)