2019年8月の講座

「日本人はどこから来たのか? -航海者だった祖先たち-」

日 時

 2019年8月17日(土) 14:00~17:00 ★終了しました

講 師

 海部 陽介(国立科学博物館)

テーマ

「日本人はどこから来たのか? -航海者だった祖先たち-」

場 所

 東京外国語大学本郷サテライト 5階 【アクセス】

【要旨】

 「日本人はどこから来たのか」。日本列島の歴史で、あまりメジャーではありませんが縄文時代の前に旧石器時代が存在します。現在の研究では、約38000年前より後には日本に人類(ホモ・サピエンス)が存在していたことは判明しています。その人類が日本に入って来たルートは現在三つが考えられています。シベリア→サハリン→北海道という北方ルート、対馬海峡を渡った対馬ルート、台湾→沖縄という沖縄ルートの三つですが、今回はその中で沖縄ルート(一番困難であったと考えられます)の移動がどうやってなされたかを確かめるプロジェクトについて説明します。

 

 沖縄の島々には人類は35000年前には存在していました。現代人には考えにくいのですが、これは大変なことです。かつては台湾から沖縄まではつながっていた時期があってその時に移住したとされていましたが、沖縄の固有種の多さなどから見てこの説は成り立ちません。海を渡ったと考えられます。移住がなされたのは間違いないので、「どのように、どんな手段で移住したか」が問題となります。しかしさまざまな疑問(船の材質や、意図しての航海かそれとも漂流か、意図しての場合島があるのか知っていたのか、方角を定められたのか)があり、このプロジェクトではそれらを研究者と探検家の協力により、徹底的に(あらゆる面から)探求していくことを目的としました。

 

 資金を募り、実際に当時の技術での航海を試みる実験を行いました。当時存在した船ということで草束船、次に竹の筏を造って航海を試みましたが、うまく行きませんでした。当時には困難と思われていた丸木舟が、当時存在した「刃部磨製石器」により製造できるとわかり、2019年7月7日に、当時あった技術のみを使用し、台湾→与那国島の航海を開始しました。男女混成5人の乗組員が櫂で漕いで黒潮を乗り越え、7月9日に45時間かけて与那国島に到着しました。GPSなどを使わなくても星や太陽の観測だけで目的地に到着できることはわかりました。これにより、探求することの楽しさを広く共有できたのではないかと考えます。

(まとめ:滝沢 玲)